調質木材(Stress Free wood) 調質木材の英文 Stress Free wood とは、材の内部応力(狂う力)を解放した“くるい''の出ない木材を意味し、その特徴を表現したものでありますが、更に解釈を付け加えるならばストレスのない、自然にくつろぎ、心むくまで憩い、やすらぎを醸しだす木……の意味ともなり、人の住まいの素材に『ふさわしい』の言葉がピッタリだと言えましょう。
調質木材は、丸太を生のまま過熱炉に入れ、高温で焦げたり、燃えたりしないように調理する、限られた特殊な条件を機械的に再現する新しい技術開発がなされた結果、大量生産が可能になったもので、その処理方法は丸太熱処理法と呼ばれ、学界でも評価され、海外も大変な関心を寄せられております。
その発想の原点は、銘木の代表とされるケヤキ材が、伐採してから早いものでも5年、普通は10年以上も蓄えて養生をしないと、狂いが甚だしくて製材品にならないと言う問題があり、この年月を何とか短縮したいという思いでした。色々な試行錯誤を繰返した末、一般の常識を越え、丸太をそのまま高温で過熱する方法を試み、高価な銘木を幾度も灰にしながら、生材でも製材が出来て、しかも狂いが少なくなる独自の技術を発見し、1983年に特許を申請しました。
また、木材物理を専門とする名古屋大学農学部の奥山剛助教授、工学部金川靖助教授らのグループは、ケヤキ材の生長応力比較で熱処理が顕著な応力緩和を示す結果を確認しました。現在では、専門家によって自動制御装置と丸太熱処理スケジュールが確立され製材品の乾燥も大量にできるようになりました。
この丸太熟処理法は、木材乾燥の権威者である寺澤真名古屋大学名誉教授や森林総合研究所木材部、日本木材加工技術協会などの専門家の評価となり、農林水産省の木材産業新技術開発促進事業の指定を受け、装置の改良と処理方法の標準化が確立され、処理の方法を「丸太熱処理法」、熱処理装置を「木材調質乾燥炉」、熱処理材は「調質木材」と命名されました。
尚、この調質木材の「処理方法及びその装置」は1991年6月13日に特許認証(特許第1607539)がおりました。
調質木材の性質
木材の性質は同じ樹種でも、「生育の履歴」や、「形態」、「水分の量(含水率)」により性状はまちまちであり、更にそれぞれ収縮膨張・反り・曲り・割れ・節抜け・ヤ二などの極めて扱い辛い問題を抱えています。
然し、この調質木材は欠点を補う色々な効果声が単独に、或いは相関的に作用して不思議な相乗効果が生れ、木材の工業材料としての問題点を軽減あるいは改善し、不適材を適材に変身させます。
更に、この新技術が、長い年月を経なければ得られない、貴重な木材資源を有効に活用する道を開くものであると考えます。
調質木材の特徴
●生長応力の緩和
木材の狂いの原因となる材内に累積された生長応力を緩和し、反り・曲り・割れなどを減少するのが最大の特長として挙げられます。
●収縮率のバランス
木材の収縮率は一様ではなく、丸太の形状を円柱に仮定すると、全樹種平均では接線の方向が最も大きく(割合1)、次に半径の方向で(約1/2)、長さの方向は極めて小さく(約1/36)なります。
この値は樹種ごとに同じ傾向で、乾燥による変形も収縮比により不定形となります。
調質木材では夫々の収縮率に変化が起り、収縮の異方性が減少し、変形の程度は少くなります。
●含水率の減少と均一化
加熱処理により、丸太内の水分は10〜30%程度減少(乾燥)し、部分的な水分のかたよりは平均化され、木材の人工乾燥時に発生する乾燥応力も少なくなります。
●平衡含水率(EMC)の低下
樹種により製材後の乾燥速度が向上したり、平衡含水率(木材の水分が大気の温度と湿度の中で、釣合いを保ち、変化なく安定するときの含水率)が低下します。
●木繊維のソフト化
加熱による熱軟化現象で木繊維・リグニンなどがソフト化(加圧下の加水分解で、可塑化・糖化現象などを経て安定)し、鋸断・切削・研磨・塗
装などの加工性が向上します。
●樹脂(ヤ二)・材色の安定
針葉樹に多い樹脂分は、揮発成分が拡散固定し、材色に艶を持ち、ヤ二は固形乾性化して、滲出が減少し樹脂障害は軽減されます。
またスギの黒心などの材内色素は、淡色化する傾向があり、商品価値が上がります。
●通気性の向上
高温加熱により細胞構造の通気性・浸透性が向上し、水分が移動し易くなります。又、薬剤などの注入量も増加します。
●その他
- 強度的性質
強度試験(曲げヤング率・曲げ強さ)結果は、樹種により、僅かに減少の例も見られるが、結論的には実用上は全く問題がありません。
- 丸太の割れ
伐採後の日数が長く乾燥して水分の少ない丸太は、表面割れや木口割れ、芯周辺に内部割れが発生することがあります。
含水率の高い生の丸太は割れの発生が少なく、きれいに仕上ります。
割れなどは、いずれも製造過程の問題で、調質木材製品では心配ありません。
- 燻色化
高温加熱で処理するので材表面が燻色化し、タールが付着しますが製品には影響いたしません。
- 生産コスト
装置の規模は自由に選択ができ、大容量にも対応でき、装置の燃料は木質廃材を主とし何でも混焼が可能であり、熱効率は蒸気加熱の有効熱量と比較し約2.5倍以上で、経済的です。
- 熱処理の公害
装置は安全性を充分配慮しており、装置自体が煤煙濾過器の機能をし、排煙の規制値は古タイヤなどを混焼しても基準を超えません。
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